株式会社アスカ・リサイクル文化社

東京山喜たんす屋 インタビュー (4)

東京山喜たんす屋 インタビュー (4)

辻先生(以下、敬称略):
商品の仕入れというのは、お客様が持ち込まれた着物になるのですか。

中村社長(以下、敬称略):
現在4分の3、75%は出張買取りになります。
残りの25%のうち10%くらいが本部に送っていただいている分、
15%は100ある店舗に持ち込んでいただいているという状況です。
75%がお客様のご自宅までの出張買取りになります。

辻:
買取りとなると目利きが必要になってくると思います。
誰でも良いとうわけにはいきませんよね。
目利きになるにはこれだけはというようなポイントというものはあるのでしょうか。

中村:
モノの価値が分かるということと、今何が売れて何が余っているかがわかるという
2つの軸が必要になってきます。
例えば、長年問屋をしてきましたから、これは昭和50年頃にほぼ50万円で
購入されたものであるとパッと分かります。
これはモノの価値がわかるということですね。
もう一つは、これを自社で丸洗いして加工して店に出したらいくらだったら売れるか
という2つの軸があります。
ものすごく高級品でも需要がなければ査定金額は低くなってしまいます。
モノの値打ちが分かるのと、今ならいくらで売れるということが分かるという
能力が必要になってきます。
市場の流通状況を知ることは非常に大事になってきますので、
査定する人間は毎週集まって情報の交換をしています。


辻:
では、昔に50万、100万で購入した着物が、今の市場の状態によっては
査定が低くなる可能性もあるわけですね。
そのような時のお客様の反応というのはいかがなものなのでしょうか。

中村:
色々な反応があります。もちろん、
査定が低いなら売るのをやめておくというお客様も当然おられます。
でも、多くのお客様は自分が着る機会がないのであれば、
他の誰かが喜んできてくれるのであれば着物のためにはそれが一番いいという反応ですね。

辻:
着物が好きだからこその反応ですね。

中村:
それに今はモノを捨てるにもお金が取られる時代ですからね。
でも、着物は40年前のモノでも売れるわけですから、
そう考えるそのような商品は骨董を除いてはそれほどないのではと思います。

辻:
買取った着物にはどのような手をいれるのですか。

中村:
丸洗いをして、殺菌、抗菌、消臭をして、染み抜きをし検針しプレスします。
しかし、金箔ははがれるは、刺繍は落ちるはとなると買取った
値段以下にしかならない場合もありますね。
一般には公表していないのですが、たんす屋では買取った金額よりも
高いお金をかけて加工してします。

辻:
今までの古着屋の常識では考えられないことですね。

中村:
お客様の立場から考えたら、いくら安いからといって誰が
着たかもわからない着物をずっと着る気をしないと思います。
かといって、それを一から洗いに出すと、呉服屋さんに頼むとすると
8000円とか10000円の費用がかかってきます。
そこをたんす屋が変えたところが多くのお客様が支持してくれたのだと思っています。

辻:
着物が手に入り易くなったわけですから、
あとは着るきっかけがポイントになってくるわけですね。
諸外国では民族衣装というのは学校教育の中である年齢に
達したら教えるわけですが、日本ではないですよね。
学生達が言うには、一度でも着る機会があれば、もっと親しみが持てるという風に言っています。
幼稚園などでは着物を着る機会はあるみたいですが、
皆あまり記憶にないみたいなので、もう少し大きくなってから学校のイベントで
着物を着る機会があれば良いのにと学生が思っているみたいです。

中村:
それはその通りですね。
でも、学校ではなく家庭で着物の着方などを教えるべきですよね。
昔は家庭で着物の着方、袴の付け方、または着物のたたみ方を教えていたわけですから。

辻:
そうですね。でも、今の現状だと家庭で教えることができないですよね。

中村:
ニューヨークーに行ったりしてタクシーに乗ったりすると、
ドライバーの方がインドの方だったりすると綺麗にターバンを巻いてたりしますよね。
あれは学校で教えてもらったからではなく、家庭で教わったのだと思います。
これが民族の伝承だと思います。

辻:
日本ではこの伝承が途切れてしまっていると。

中村:
はい。どこでこの伝承が途切れてしまったかというと、
僕は戦争だと思います。
戦争で日本的なものを伝承することをやめてしまったのですね。
あの戦争で戦前のものを全て伝承することをやめてしまったと思っています。
ただ、現在の日本はアメリカ的価値観を受け入れ、
アメリカ型の消費経済の恩恵を受けて経済成長させてもらって
今日に至るのであるから、そのことには深く感謝すべきであるとも思っています。

辻:
でも、9.11のテロ以降アメリカ的価値観が揺らいできていますよね。

中村:
はい。今はそのような状況だと思います。
じゃあ、次にどのような価値観が世界をリードしていくのかと考えたとき、
僕は日本的価値観であって欲しい。

辻:
その理由はなんですか。

中村:
着物を例にしてお話すると、着物は染める前から染めることを前提に染色をします。
縫う前から縫い変え、いわゆる仕立て直すことを前提にしています。
これは世界中の民族衣装でそのようなことを前提にしている衣装はないです。
スーツ等は解いてしまったらバラバラで、それを息子用に仕立て直すことなんてしません。
でも、着物の場合は解いて洗いなどをしてまた息子の寸法に合わせて
縫うというのが着物の常識です。
これが日本的価値観。

辻:
日本の価値観は循環型経済を表していると。

中村:
そうです。アメリカ的資本主義の次にやってくるのは循環型経済だと思います。
その循環型経済の概念を持ち合わせているのが日本的価値観であると思います。
その日本的価値観を今の若い人たちは充分に発揮できると思いますよ。
それは学生の方たちと一緒に仕事していて感じることですね。

辻:
最後に、中村社長の夢やこれからのリサイクルビジネスの展望などについて
お聞きできますか。

中村:
自分が社長になった時は、表現が悪いかもしれないけど三重苦の状態でした。
着物はいらなくなって、問屋はいらなくなっていく、崩壊していく、
自分らの周りでもバタバタとなくなっていきました。
その中で後はじゃあどう変わるか。
当然時代は変わるわけですから変わらなくちゃいけないのは当たり前で、
どっちを向いて変わっていくかが重要です。
今のキーワードというか、この時代の潮流からいうと一つの方向性は
間違いなく循環型経済に進みます。
ですから、リユースリサイクルというのは間違いない方向で、
リビジネスと言いますが単にリサイクルじゃなくて、例えばリメイクとはリフォームとかリペア、
またはレンタルもある種リビジネスだと思いますが、
その中で新しい市場が生まれる可能性は充分にあると思っています。
それが21世紀型のリビジネスであると思います。

終わり

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